「おまじないベーカリー」第5章:ミアの願い 2025/02/08 04:29 Facebookでシェア URLをコピー 報告 「おまじないベーカリー」第5章:ミアの願いルイが「おまじないベーカリー」に通い始めてから、もうすぐ一ヶ月が経とうとしていた。「おはようございます!」「……おはよう」いつもの朝、いつもの挨拶。けれど、少しずつ変わってきたことがある。ルイの表情が、前よりも柔らかくなったこと。そして、ミア自身も、彼が来るのを楽しみにするようになったこと。「今日は何にしますか?」「……そうだな」ルイは少し考えて、パンの棚を見つめる。そして、クロワッサンに加えて、ふんわりとしたメロンパンを指さした。「今日はこれも」ミアは驚いたように目を丸くする。「メロンパン、初めてですよね?」「まあな」ルイはどこか気恥ずかしそうに視線を逸らしながら、ぽつりと言った。「……おまじない、かけてくれるか?」ミアはふっと笑って、そっとパンを袋に詰める。「もちろんです。今日はどんな願いごとですか?」ルイは少し迷うようにして、それからゆっくりと言った。「……ミアが、ちゃんと自分の願いも叶えられるように」「……え?」ミアは思わず手を止めた。「……ミアはいつも、人のことばっかり願ってるだろ?」ルイの低くて優しい声が、心にじんわりと響く。「自分のことも、ちゃんと願えよ」ミアの胸が、ふわっと温かくなった。「……わかりました」そっと袋を手渡すと、ルイは少し満足げに頷いた。「じゃあ、それで」ミアは彼の背中を見送りながら、ひとつ深呼吸をした。そして、小さくつぶやく。「私の願い……かぁ」今まで考えたこともなかった。でも、ルイに言われたことで、ふと気づいてしまった。私の願いって……なんだろう?