《星空カフェ》第2章:星に願いを 2025/01/19 08:34 Facebook에 공유 URL 복사 신고 《星空カフェ》第2章:星に願いを「あの…こんにちは。」陽翔はまた「ほしぞらカフェ」の扉をくぐった。店内は変わらず静かで、外の寒さとは対照的に、ほんのり温かい空気が流れている。「また来てくれたんですね。」カウンターの奥で微笑むのは、昨日と同じ女性。名前も知らない彼女の、落ち着いた声が心地よかった。「この間のミルクティーが美味しかったので。」陽翔は照れ隠しのように言って、空いている席に腰を下ろした。「それはよかったです。今日はどうしますか?」「じゃあ…今日も、あれをお願いします。」「かしこまりました。」淡々としたやり取りの中にも、どこか柔らかな空気が流れていた。目の前で丁寧に紅茶を淹れる姿をぼんやり眺めていると、ふとカウンターの端に置かれたノートが目に入った。「これ…?」陽翔が指差すと、女性は一瞬驚いた顔をしてから微笑んだ。「それは**“星に願いを”ノート**です。」「星に願いを…?」「お客さんが、叶えたい願いや、心に秘めた想いを書き留めるノートなんです。ここに書くと、星が願いを運んでくれるかもしれない…って。」「へぇ、ロマンチックですね。」陽翔はそう言いながらも、どこか懐かしいような気持ちになった。幼い頃、星に願いごとをしたことがあっただろうか。大人になると、そんなことも忘れてしまう。「書いてみますか?」そう聞かれ、陽翔は少し迷ったが、そっとノートを開いた。そこには、様々な人の願いが綴られていた。「好きな人と両想いになれますように」「お母さんの病気が治りますように」「自分に自信が持てますように」どれも、素直な気持ちが込められた言葉だった。陽翔はペンを取ると、迷いながらも一言書き込んだ。「もう少し、素直になれますように」書いた瞬間、少し肩の力が抜けた気がした。「素敵な願いですね。」女性はカップを差し出しながら、柔らかく微笑んだ。「あ、そういえば…あなたの名前、まだ聞いてませんでしたね。」「あ、そうでしたね。春野 紬です。このカフェの店主です。」「瀬川陽翔です。よろしくお願いします。」名前を交わしただけなのに、ふと心が温かくなる。それから陽翔は、時間を見つけては「ほしぞらカフェ」を訪れるようになった。紬と他愛ない会話を交わし、静かな時間を過ごす。